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2026.07.22WEB

個人事業主がWeb制作を依頼する前に準備すべき3つのこと【デザイナーが解説】

この記事の要点

Web制作の準備とは、制作前に「誰に何を伝えるか」「どんなイメージか」「予算上限はいくらか」の3つを明確にすることです。

この準備が不足すると、制作途中での大幅な修正が発生し、予算超過・納期遅延・満足度低下に直結します。筆者がフリーランスデザイナーとして10年以上の実務で学んだのは、「準備8割、制作2割」の原則です。目的・イメージ・予算さえ言語化できれば、写真・原稿・技術設定は外注できます。完璧を目指さず、最低限の3つを用意して早めに相談することが、成果への最短ルートです。

Web制作の準備が成果を決める理由 – 「後戻りコスト」の構造

「準備8割、制作2割」。これは筆者がフリーランスのデザイナーとして実感している原則です。制作前の準備の質が、予算・納期・成果物の満足度を左右します。

なぜそうなるのか。前工程に戻る修正は、追加料金が必要になる場合があるからです。実際に筆者が担当した複数の案件で起きた失敗パターンを2つ紹介します。

よくある失敗パターン①: 写真を用意せず仮画像で進めた結果、公開直前に全面差し替え

これは筆者が2022年に担当した美容系サロンのサイトで起きた失敗です。クライアントは「写真はあとで撮ります」と言い、フリー素材の仮画像でデザインを進めました。ところが公開2週間前、実際に撮影した店内写真を見せてもらうと、仮画像とまったく色味が違うことが分かりました。

結果、レイアウトを全面的に作り直すことになりました。納期は1ヶ月延び、クライアントも筆者もストレスを抱える事態に。

この失敗の本質は、「写真は飾りで、あとで差し替えればいい」という誤解です。デザインは写真の色味・構図に大きく依存します。写真が変われば、色設計・余白の取り方・文字の配置まで変わります。仮画像で進めると、後戻りコストが膨らむのです。

よくある失敗パターン②: 「お任せします」で発注し、イメージと全く違う成果物が届いた

もう一つは、筆者が2023年に担当した飲食店のサイトでのケースです。クライアントは「デザインはお任せします」と言い、参考サイトも好みも伝えませんでした。筆者はヒアリングで業種と事業内容だけ聞き、「シンプルで信頼感のあるデザイン」を提案しましたが、クライアントの期待と大きくズレてしまいました。

デザイナーは超能力者ではありません。言語化されていないイメージを読み取ることはできないのです。「お任せ」と言われると、デザイナーは自分の感覚で最適解を探すしかなく、クライアントの期待とズレるリスクが高まります。

なぜクライアントは「お任せ」と言ってしまうのか。筆者の経験では、「デザインの知識がないから、自分が意見を言う資格がない」と思い込んでいるケースが多いです。しかし実際には、知識がなくても「この色が好き」「この雰囲気がいい」という感覚は誰にでもあります。その感覚を参考サイトとして見せてもらえれば、デザイナーは最適な提案ができます。

ホームページ制作の失敗の多くは、技術的なミスより構造的な準備不足とパートナー選びのミスに起因するという調査もあります*1。逆に言えば、準備さえしっかりしていれば、制作そのものはスムーズに進むということです。では、個人事業主が限られた時間とリソースの中で、どこから手をつければいいのか。次のセクションで、優先すべき3つの準備を具体的に解説します。

個人事業主が優先すべき3つの準備 – リソース制約下の判断基準

全部自分でやらなくていい。これが大前提です。個人事業主は時間もリソースも限られています。完璧を目指すと動けなくなるので、優先度の高い準備に絞りましょう。筆者が実務で「これだけあればスタートできる」と判断しているのは、次の3つです。

準備①: 「事業課題の解決」を軸にした目的とターゲットの明確化

Webサイトは作ることが目的ではありません。今の事業における「集客が足りない」「信頼性を高めたい」「採用のミスマッチを減らしたい」といった具体的な課題を、サイトを通じてどう解決したいか。この「事業課題の解決」の視点を持つことが、設計の精度を劇的に高めます。

たとえば:

  • OK例: 「30代の働く女性に、週末でも通えるリラクゼーションサロンとして知ってもらいたい」
  • NG例: 「幅広い層に、うちのサービスを知ってもらいたい」

NG例は、「幅広い層」が具体的に誰なのか分からず、デザインの方向性が決まりません。

筆者がこの情報で判断していること: OK例のように「30代女性・週末」という情報があれば、即座に配色やフォント、スマホファーストの設計など設計の軸を立てられます。一方、NG例のように「幅広い層」と言われると判断軸が消失します。ターゲットを絞るほど刺さる力が増すのです。

準備のコツ: まず「一番来てほしいお客さん」が今、どんな悩み(課題)を抱えているかを想像してください。その悩みを解決するために、あなたのWebサイトがどう役に立てるのか。完璧な用語でなくても構いません。「◯◯で悩んでいる人に、△△という解決策を提示して安心してもらいたい」と言語化できれば、それが制作の強い指針になります。

準備②: 参考サイト3つと「好き/嫌い」の言語化

「参考になるサイトを3つ選んで、好きなポイントと嫌いなポイントを言語化してください」。これは筆者がヒアリングで必ず聞く質問です。デザインは主観的なものなので、言葉だけで伝えるのは難しい。視覚的な参考を共有することで、イメージのズレを防ぐのです。

よくある誤解: 「同業種のサイトから選ばなきゃいけない」。これは間違いです。業種よりデザインの雰囲気で選んでください。例えば美容室ならアパレルやカフェのサイトでも構いません。「この色使いが好き」「この写真の見せ方がいい」という視点で探しましょう。

準備のコツ: Google画像検索で「おしゃれ ホームページ」「シンプル Webサイト」などと検索し、気になるサイトを3つ選ぶ。それぞれについてメモしてください。完璧でなくても「なんとなく好き」を「どこが?」に分解するだけで方向性を掴めます。

  • 好きなポイント(例:「この青色が爽やか」「写真が大きくて見やすい」「余白が多くて落ち着く」)
  • 嫌いなポイント(例:「この赤は派手すぎる」「文字が小さくて読みにくい」「アニメーションがうるさい」)

インスピレーションを広げる!デザイナー推薦のギャラリーサイト活用法

Google検索だけでなく、プロも参考にしているデザインギャラリーサイトを活用すると、より具体的なイメージが見つかります。以下のサイトで「シンプル」「誠実」「女性向け」などのキーワードで検索してみてください。

  • SANKOU!: 国内の優れたWebデザインが豊富にまとめられており、業種やテイストから検索可能
  • MUUUUU.ORG: 縦に長いサイトや、クオリティの高いオーソドックスなデザインが充実
  • 81-web.it: 日本国内の秀逸なWebサイトを網羅しており、最新のトレンドを把握しやすい

準備③: 予算・納期の現実的な決め方(相場の読み方)

「予算はいくらですか?」と聞かれて答えられますか? 相場が分からないと不安ですよね。まず現実的な相場感を示します。

2025年時点での費用相場は以下の通りです:

  • シンプルな5ページ程度のサイト: 20万円〜50万円
  • 中規模サイト(10〜20ページ): 50万円〜100万円
  • WordPressでのサイト制作: 30万円〜150万円程度

フリーランスに依頼する場合、制作会社の相場より約3〜5割ほど安くなるのが一般的です*2。制作会社は分業のため人件費がかさみますが、フリーランスは一人で全工程を担うためコストが抑えられます。

20万円と50万円の差は何で決まるのか? 主に以下の3つです:

  1. デザインのカスタマイズ度: テンプレート活用か、完全オリジナルか
  2. 機能の数: 問い合わせフォームだけか、予約システム・会員機能も入れるか
  3. ページ数と原稿量: 5ページか、20ページか

筆者の肌感覚では、個人事業主の8割は30万円前後で満足度の高いサイトを作れています。最初から全機能を盛り込むより、シンプルにスタートして後から拡張する方が費用対効果が高いです。

予算の決め方: まず「このくらいなら出せる」という上限を設定してください。その金額をデザイナーに伝えれば、「この予算ならこのページ構成と機能が可能です」と提案してくれます。予算を隠して見積もりをもらうより、先に上限を示した方が現実的な提案を得やすいです。

納期の決め方: 「◯月◯日までに公開したい」という希望があれば、それをデザイナーに伝えましょう。シンプルなサイトで制作期間1〜2ヶ月、中規模で2〜3ヶ月が目安です。ただし、発注側からの写真や原稿の提出が遅れると納期も延びます。逆算して、自分が資料を用意できる期限も含めてデザイナーに伝えましょう。

「お任せします」がデザイナーを最も困らせる – ヒアリングで本当に必要な「言語化」のコツ

「おしゃれにしてください」「シンプルに」「お任せで」—— これらはデザイナーが最も困る言葉です。なぜなら、「おしゃれ」も「シンプル」も人によって定義が全く違うからです。

実際のヒアリングでよくある会話を、NG例とOK例で見てみましょう。

NG例とOK例で見るヒアリングの答え方

質問: 「どんなデザインがお好みですか?」

  • NG例: 「おしゃれな感じで」「シンプルに」「お任せします」 → デザイナーは困ります。期待の定義が分からないため、自分の感覚で進めるしかなくズレるリスクが高い。
  • OK例: 「参考サイトを3つ選びました。この青とグレーの配色が好きです。ただ、この赤いボタンは派手すぎるので避けてください」 → デザイナーは具体的な方向性を掴めます。

質問: 「何を一番重視しますか?」

  • NG例: 「全部大事です」「どれも妥協したくない」 → 全てを最高レベルで実現するのは不可能です。優先順位が分からないとデザイナーは判断に迷います。
  • OK例: 「デザインのクオリティを最優先したいです。納期は多少遅れても大丈夫ですが、予算は50万円が上限です」 → デザイナーは「デザインに時間をかけ、機能はシンプルに絞る」という戦略を立てられます。

質問: 「写真や原稿はご用意いただけますか?」

  • NG例: 「あとで送ります」(いつ送るのか不明) → 提出が遅れるとデザインが進まず、納期が延びます。いつまでに用意できるかを明示してください。
  • OK例: 「写真は来週までに送ります。原稿は書けないので、お任せできますか?」 → デザイナーは「原稿はこちらで書く」とスケジュールに組み込めます。できないことを正直に伝えることがスムーズな進行につながります。

優先順位を明示すると、デザイナーが最適解を提案できる

デザイン・機能・納期・予算のうち、どれを最優先しますか? この問いに答えるだけでデザイナーの提案の質が変わります。

  • デザイン優先: 予算と時間をかけて、オリジナリティの高いデザインを追求
  • 機能優先: デザインはシンプルに抑え、予約システム・ECなどの実装に注力
  • 納期優先: 既存のテンプレートを活用し、短期間で公開
  • 予算優先: 最小限のページ構成で、必要な情報だけを掲載

全てを叶えようとすると、どれも中途半端になります。優先順位を決め、それ以外は柔軟に調整する。これがリソース制約下での現実的な判断です。

制作の全体像を把握する – 企画から運用までを見据えたデザインの役割

Web制作は「作って終わり」ではなく、公開後の運用までがセットです。ヒアリングから始まり、ワイヤーフレーム(設計図)作成、デザイン、コーディング、そして公開後の改善。この一連の流れの中で、デザイナーは単に見た目を整えるだけでなく、事業の成長を支えるパートナーとしての役割を担います。

ユーザー体験(UI/UX)とアクセシビリティを重視した設計手法

現代のWeb制作において最も重要なのは「ユーザーが迷わず目的を達成できるか」です。使い勝手(UI/UX)はもちろん、高齢の方や障害のある方、あるいは通信環境が悪い場所でも情報にアクセスできる「アクセシビリティ」への配慮が、検索エンジンからの評価やブランドの信頼性に直結します。準備の段階から『誰にでも使いやすいサイトにしたい』という意向を伝えることが重要です。

外注してよい5つの項目 – 全部自分でやらなくていい

「準備を完璧にしなきゃ」と思い込んで動けなくなっていませんか? 安心してください。写真・原稿・技術的な設定は外注できます。筆者が実務で「これは外注した方がコスパがいい」と判断している5項目を紹介します。

外注した方がコスパがいい5項目

  1. 写真撮影: プロのカメラマンに依頼すれば、商品・店舗・人物の魅力を引き出す写真が撮れます。スマホ撮影より仕上がりの差は歴然です。
  2. 原稿ライティング: 「何を書けばいいか分からない」なら、ライターに依頼しましょう。ヒアリングで事業内容を聞き取り、SEOを意識した文章を書いてくれます。
  3. ロゴ制作: ロゴがまだないなら、Webサイトと一緒に制作するのが効率的です。サイトのデザインとロゴの雰囲気を統一できます。
  4. ページ構成の設計(サイトマップ・ワイヤーフレーム): 「どのページが必要か」「どの順番で情報を見せるか」はデザイナーが提案します。あなたは「伝えたいこと」を箇条書きで伝えるだけでOK。
  5. 技術的な設定(ドメイン・サーバー・WordPressのインストール): これは完全に外注すべきです。自分で設定しようとするとトラブル時に対処できず、公開が遅れます。

自分でやるべき「意思決定の3項目」

逆に、自分でやるべき(外注できない)項目は次の3つです:

  1. 目的とターゲットの言語化: 誰に何を伝えたいかは事業主であるあなたにしか決められません
  2. イメージの方向性の提示(参考サイト・好き嫌い): デザインの好みは主観的なので、あなた自身が選ぶ必要があります
  3. 予算上限の設定: どこまでお金をかけられるかは事業の財務状況を踏まえてあなたが決めることです

この3つさえ用意できれば、あとはデザイナーが提案します。

準備チェックリスト – 最低限これだけあればスタートできる

最後に、実務で使える準備チェックリストを提示します。以下の項目が揃えば、デザイナーに相談できます。

必須項目(これだけあればスタートできる)

  • 目的とターゲット(「誰に、何を伝えたいか」を一言で)
  • 参考サイト3つ(好きなポイント・嫌いなポイントを箇条書き)
  • 予算上限(「このくらいなら出せる」という金額)
  • 希望納期(「◯月◯日までに公開したい」という目標)

あると良い項目(提出できればベター)

  • 会社情報(事業内容・所在地・連絡先)
  • 商品写真・店舗写真(あれば。なければ撮影を依頼)
  • ロゴデータ(あれば。なければ制作を依頼)
  • 既存の原稿やパンフレット(あれば参考になる)

無くても大丈夫な項目(デザイナーが提案する)

  • ページ構成(どのページが必要か)
  • デザイン案(色・レイアウトの詳細)
  • 原稿(文章を書けない場合は外注可能)
  • 技術知識(ドメイン・サーバー・WordPress等の仕組み)

重要なのは、「完璧を待たずに相談する」ことです。筆者がヒアリングで最も嬉しいのは、「まだ準備が完璧じゃないんですが、相談してもいいですか?」と言ってもらえることです。準備の途中でもデザイナーは道筋を示せます。早めに相談してもらった方が、準備の方向性を一緒に決められるため無駄な作業が減ります。

あなたのWebサイトが、事業の成長を支える武器になることを願っています。

デザイン・制作のご相談について

ABABO DESIGNは、フライヤー・パンフレット・ロゴなどの印刷物からWebサイトまでを一貫して手がけるデザイン事務所です。「何を伝えるか」を整理する段階からご相談いただけるので、内容が固まっていなくても大丈夫です。中小企業の広報・採用・ブランディングの実情に合わせて、無理のない進め方をご提案します。

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出典・参考

*1 digrart / Unima(2025年)
*2 Web幹事(2025年)

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