個人事業主がWeb制作を依頼する前に準備すべき3つのこと【デザイナーが解説】
この記事の要点
Web制作の準備とは、制作前に「誰に何を伝えるか」「どんなイメージか」「予算上限はいくらか」の3つを明確にすることです。この準備が不足すると、制作途中での大幅な修正が発生し、予算超過・納期遅延・満足度低下に直結します。筆者がフリーランスデザイナーとして10年以上の実務で学んだのは、「準備8割、制作2割」の原則。目的・イメージ・予算さえ言語化できれば、写真・原稿・技術設定は外注できます。完璧を目指さず、最低限の3つを用意して早めに相談することが、成果への最短ルートです。
Web制作の準備が成果を決める理由 – 「後戻りコスト」の構造
「準備8割、制作2割」。これは筆者がフリーランスのデザイナーとして実感している原則です。制作前の準備の質が、予算・納期・成果物の満足度を左右します。
なぜそうなるのか。前工程に戻る修正は、追加料金が必要になる場合があるからです。 実際に筆者が担当した複数の案件で起きた失敗パターンを2つ紹介します。
よくある失敗パターン①: 写真を用意せず仮画像で進めた結果、公開直前に全面差し替え
これは筆者が2022年に担当した美容系サロンのサイトで起きた失敗です。クライアントは「写真はあとで撮ります」と言い、フリー素材の仮画像でデザインを進めました。ところが公開2週間前、実際に撮影した店内写真を見せてもらうと、仮画像とまったく色味が違う。仮画像は明るいナチュラルトーンでしたが、実際の写真は暗めの照明で落ち着いた雰囲気。背景も雑然としており、そのままでは使えない状態でした。
結果、レイアウトを全面的に作り直すことになりました。納期は1ヶ月延び、クライアントも筆者もストレスを抱える事態に。
この失敗の本質は、「写真は飾りで、あとで差し替えればいい」という誤解です。 デザインは写真の色味・構図に大きく依存します。写真が変われば、色設計・余白の取り方・文字の配置まで変わります。仮画像で進めると、後戻りコストが膨らむのです。
よくある失敗パターン②: 「お任せします」で発注し、イメージと全く違う成果物が届いた
もう一つは、筆者が2023年に担当した飲食店のサイトでのケースです。クライアントは「デザインはお任せします」と言い、参考サイトも好みも伝えませんでした。筆者はヒアリングで業種と事業内容だけ聞き、「シンプルで信頼感のあるデザイン」を提案しました。初稿を見せた瞬間、クライアントは言いました。「思っていたのと違います。もっとカラフルで元気な感じがよかったんです」。
デザイナーは超能力者ではありません。 言語化されていないイメージを読み取ることはできない。「お任せ」と言われると、デザイナーは自分の感覚で最適解を探すしかなく、クライアントの期待とズレるリスクが高まります。
なぜクライアントは「お任せ」と言ってしまうのか? 筆者の経験では、「デザインの知識がないから、自分が意見を言う資格がない」と思い込んでいるケースが多い。しかし実際には、知識がなくても「この色が好き」「この雰囲気がいい」という感覚は誰にでもあります。その感覚を、参考サイトという形で見せてもらえれば、デザイナーは最適な提案ができるのです。
ホームページ制作の失敗の多くは、技術的なミスより構造的な準備不足とパートナー選びのミスに起因するという調査もあります(出典: digrart / Unima, 2025年)。逆に言えば、準備さえしっかりしていれば、制作そのものはスムーズに進むということです。
では、個人事業主が限られた時間とリソースの中で、どこから手をつければいいのか。次のセクションで、優先すべき3つの準備を具体的に解説します。
個人事業主が優先すべき3つの準備 – リソース制約下の判断基準
全部自分でやらなくていい。 これが大前提です。個人事業主は時間もリソースも限られています。完璧を目指すと動けなくなるので、優先度の高い準備に絞りましょう。筆者が実務で「これだけあればスタートできる」と判断しているのは、次の3つです。
準備①: 目的とターゲットを「一言」で言えるようにする
「誰に、何を伝えたいか」を一言で答えられますか? これがWebサイト設計の起点です。デザイナーはこの情報をもとに、色・レイアウト・言葉のトーンを決めます。
たとえば:
- OK例: 「30代の働く女性に、週末でも通えるリラクゼーションサロンとして知ってもらいたい」
- NG例: 「幅広い層に、うちのサービスを知ってもらいたい」
NG例は、「幅広い層」が具体的に誰なのか分からず、デザインの方向性が決まりません。
筆者がこの情報で判断していること: OK例のように「30代女性・週末」という情報があれば、筆者は即座に「柔らかいベージュやピンク系の配色」「セリフ体の優しいフォント」「スマホファースト設計(平日の昼休みに検索する層)」と設計の軸を立てられます。一方、NG例のように「幅広い層」と言われると、10代向けのポップな色か、50代向けの落ち着いた色か、判断軸が消失します。デザインは誰にでも刺さる万能薬ではなく、ターゲットを絞るほど刺さる力が増すのです。
準備のコツ: まず「一番来てほしいお客さん」を一人想像してください。年齢・性別・職業・悩みを具体的に。そして「そのお客さんに、この一言だけ伝えられるとしたら?」と自問する。完璧なマーケティング用語で語る必要はありません。自分の言葉で「◯◯な人に、△△を伝えたい」と言えればOKです。
準備②: 参考サイト3つと「好き/嫌い」の言語化
「参考になるサイトを3つ選んで、好きなポイントと嫌いなポイントを言語化してください」。 これが筆者がヒアリングで必ず聞く質問です。デザインは主観的なものなので、言葉だけで伝えるのは難しい。だから、視覚的な参考を共有することで、イメージのズレを防ぐのです。
よくある誤解: 「同業種のサイトから選ばなきゃいけない」。これは間違いです。業種よりデザインの雰囲気で選んでください。たとえば美容室を経営しているなら、美容室のサイトだけでなく、アパレルやカフェのサイトでもいい。「この色使いが好き」「この写真の見せ方がいい」という視点で探しましょう。
準備のコツ: Google画像検索で「おしゃれ ホームページ」「シンプル Webサイト」などと検索し、気になるサイトを3つ選ぶ。それぞれについて:
- 好きなポイント(例:「この青色が爽やか」「写真が大きくて見やすい」「余白が多くて落ち着く」)
- 嫌いなポイント(例:「この赤は派手すぎる」「文字が小さくて読みにくい」「アニメーションがうるさい」)
を箇条書きでメモしてください。完璧な言語化でなくていい。「なんとなく好き」を「どこが?」に分解するだけで、デザイナーは方向性を掴めます。
準備③: 予算・納期の現実的な決め方(相場の読み方)
「予算はいくらですか?」と聞かれて答えられますか? 相場が分からないと不安ですよね。まず現実的な相場感を示します。
2025年時点での費用相場は以下の通りです:
- シンプルな5ページ程度のサイト: 20万円〜50万円
- 中規模サイト(10〜20ページ): 50万円〜100万円
- WordPressでのサイト制作: 30万円〜150万円程度
フリーランスに依頼する場合、制作会社の相場より約3〜5割ほど安くなるのが一般的です(出典: Web幹事, 2025年)。制作会社は営業・ディレクター・デザイナー・エンジニアが分業するため人件費がかさみますが、フリーランスは一人で全工程を担うため、コストが抑えられます。
20万円と50万円の差は何で決まるのか? 筆者の経験では、主に以下の3つです:
- デザインのカスタマイズ度: テンプレート活用か、完全オリジナルか
- 機能の数: 問い合わせフォームだけか、予約システム・会員機能も入れるか
- ページ数と原稿量: 5ページか、20ページか
筆者の肌感覚では、個人事業主の8割は30万円前後で満足度の高いサイトを作れています。最初から全機能を盛り込むより、シンプルにスタートして後から拡張する方が、費用対効果が高いのです。
予算の決め方: まず「このくらいなら出せる」という上限を設定してください。完璧な根拠がなくても大丈夫。その金額をデザイナーに伝えれば、「この予算ならこのページ構成と機能が可能です」と提案してくれます。予算を隠して見積もりをもらうより、先に上限を示した方が、現実的な提案を得やすいのです。
納期の決め方: 「◯月◯日までに公開したい」という希望があれば、それをデザイナーに伝えましょう。筆者の経験では、シンプルなサイトで制作期間1〜2ヶ月、中規模で2〜3ヶ月が目安です。ただし、発注側からの写真や原稿の提出が遅れると、納期も延びます。逆算して、自分が資料を用意できる期限も含めてデザイナーに伝えましょう。
「お任せします」がデザイナーを最も困らせる – ヒアリングで本当に必要な「言語化」のコツ
「おしゃれにしてください」「シンプルに」「お任せで」—— これらはデザイナーが最も困る言葉です。 なぜなら、「おしゃれ」も「シンプル」も、人によって定義が全く違うからです。ある人にとってのシンプルは、別の人には「地味」に見える。ある人にとってのおしゃれは、別の人には「派手」に映る。
実際のヒアリングでよくある会話を、NG例とOK例で見てみましょう。
NG例とOK例で見るヒアリングの答え方
質問: 「どんなデザインがお好みですか?」
NG例: 「おしゃれな感じで」「シンプルに」「お任せします」→ デザイナーは困ります。おしゃれの定義が分からないため、自分の感覚で進めるしかなく、クライアントの期待とズレるリスクが高い。
OK例: 「参考サイトを3つ選びました。この青とグレーの配色が好きです。ただ、この赤いボタンは派手すぎるので避けてください」→ デザイナーは具体的な方向性を掴めます。この情報があれば、筆者は「青系を基調にしつつ、アクセントカラーは控えめに」と設計判断を立てられます。好き嫌いを明示してもらえると、その範囲内で最適解を提案できるのです。
質問: 「何を一番重視しますか?」
NG例: 「全部大事です」「どれも妥協したくない」→ デザイン・機能・納期・予算の全てを最高レベルで実現するのは不可能です。優先順位が分からないと、デザイナーは判断に迷います。
OK例: 「デザインのクオリティを最優先したいです。納期は多少遅れても大丈夫ですが、予算は50万円が上限です」→ デザイナーは「デザインに時間をかけ、機能はシンプルに絞る」という戦略を立てられます。
質問: 「写真や原稿はご用意いただけますか?」
NG例: 「あとで送ります」(いつ送るのか不明)→ 写真・原稿の提出が遅れると、デザインが進まず、納期が延びます。「いつまでに用意できるか」を明示してください。
OK例: 「写真は来週までに送ります。原稿は書けないので、お任せできますか?」→ デザイナーは「原稿はこちらで書く」とスケジュールに組み込めます。「できないこと」を正直に伝えることが、スムーズな進行につながります。
優先順位を明示すると、デザイナーが最適解を提案できる
デザイン・機能・納期・予算のうち、どれを最優先しますか? この問いに答えるだけで、デザイナーの提案の質が変わります。
- デザイン優先: 予算と時間をかけて、オリジナリティの高いデザインを追求
- 機能優先: デザインはシンプルに抑え、予約システム・ECなどの実装に注力
- 納期優先: 既存のテンプレートを活用し、短期間で公開
- 予算優先: 最小限のページ構成で、必要な情報だけを掲載
全てを叶えようとすると、どれも中途半端になります。優先順位を決め、それ以外は柔軟に調整する。これがリソース制約下での現実的な判断です。
外注してよい5つの項目 – 全部自分でやらなくていい
「準備を完璧にしなきゃ」と思い込んで、動けなくなっていませんか? 安心してください。写真・原稿・技術的な設定は、外注できます。筆者が実務で「これは外注した方がコスパがいい」と判断している5項目を紹介します。
外注した方がコスパがいい5項目
写真撮影: プロのカメラマンに依頼すれば、商品・店舗・人物の魅力を引き出す写真が撮れます。スマホで自撮りするより、時間と仕上がりの差は歴然です。
原稿ライティング: 「何を書けばいいか分からない」なら、ライターに依頼しましょう。ヒアリングで事業内容を聞き取り、SEOを意識した文章を書いてくれます。
ロゴ制作: ロゴがまだないなら、Webサイトと一緒に制作するのが効率的です。Webサイトのデザインとロゴの雰囲気を統一できるため、ブランドの一貫性が高まります。
ページ構成の設計(サイトマップ・ワイヤーフレーム): 「どのページが必要か」「どの順番で情報を見せるか」は、デザイナーが提案します。あなたは「伝えたいこと」を箇条書きで伝えるだけでOK。
技術的な設定(ドメイン・サーバー・WordPressのインストール): これは完全に外注すべきです。自分で設定しようとすると、トラブルが起きたときに対処できず、公開が遅れます。
自分でやるべき「意思決定の3項目」
逆に、自分でやるべき(外注できない)項目は、次の3つです:
- 目的とターゲットの言語化: 誰に何を伝えたいかは、事業主であるあなたにしか決められません
- イメージの方向性の提示(参考サイト・好き嫌い): デザインの好みは主観的なので、あなた自身が選ぶ必要があります
- 予算上限の設定: どこまでお金をかけられるかは、事業の財務状況を踏まえてあなたが決めることです
この3つさえ用意できれば、あとはデザイナーが提案します。
準備チェックリスト – 最低限これだけあればスタートできる
最後に、実務で使える準備チェックリストを提示します。以下の項目が揃えば、デザイナーに相談できます。
必須項目(これだけあればスタートできる)
- ✅ 目的とターゲット(「誰に、何を伝えたいか」を一言で)
- ✅ 参考サイト3つ(好きなポイント・嫌いなポイントを箇条書き)
- ✅ 予算上限(「このくらいなら出せる」という金額)
- ✅ 希望納期(「◯月◯日までに公開したい」という目標)
あると良い項目(提出できればベター)
- ◯ 会社情報(事業内容・所在地・連絡先)
- ◯ 商品写真・店舗写真(あれば。なければ撮影を依頼)
- ◯ ロゴデータ(あれば。なければ制作を依頼)
- ◯ 既存の原稿やパンフレット(あれば参考になる)
無くても大丈夫な項目(デザイナーが提案する)
- △ ページ構成(どのページが必要か)
- △ デザイン案(色・レイアウトの詳細)
- △ 原稿(文章を書けない場合は外注可能)
- △ 技術知識(ドメイン・サーバー・WordPress等の仕組み)
重要なのは、「完璧を待たずに相談する」ことです。 筆者がヒアリングで最も嬉しいのは、「まだ準備が完璧じゃないんですが、相談してもいいですか?」と言ってもらえることです。準備の途中でも、デザイナーは「こうすればいい」と道筋を示せます。むしろ早めに相談してもらった方が、準備の方向性を一緒に決められるため、無駄な作業が減ります。
よくある質問(FAQ)
Q. 写真や原稿がまだ準備できていなくても、依頼は可能ですか?
可能です。写真撮影・原稿ライティングは外注できます。ヒアリング時に「写真・原稿も依頼したい」と伝えれば、デザイナーがカメラマンやライターを手配するか、自ら対応します。写真は1枚あたり5,000円〜、原稿は1ページあたり10,000円〜が相場です。予算に含めるか別途見積もりかを確認しましょう。
Q. 予算の相場が分からない場合、どうやって決めればいいですか?
シンプルな5ページ程度のサイトで20〜50万円、中規模で50〜100万円が相場です。まず「このくらいなら出せる」という上限を設定し、その範囲でできることをデザイナーに相談するのが現実的です。フリーランスは制作会社より3〜5割安い傾向があります。筆者の経験では、個人事業主の8割は30万円前後で満足度の高いサイトを作れています。
Q. 参考サイトは同業種から選ぶべきですか?
業種より「デザインの雰囲気」で選んでください。たとえば飲食店のサイトでも、美容室やアパレルのサイトでも、「この色使いが好き」「この写真の見せ方がいい」という視点で3つ選び、好きなポイントと嫌いなポイントを言語化して伝えましょう。同業種に縛られる必要はありません。
Q. 「お任せします」と伝えるのはダメですか?
完全なお任せはデザイナーが困ります。最低限、①誰に何を伝えたいか ②参考サイト3つ ③予算上限の3つを提示すれば、デザイナーが最適な提案をできます。細部の技術やページ構成は「お任せ」で大丈夫です。判断軸を共有することが、期待とのズレを防ぐ鍵です。
Web制作の準備は、完璧を目指さなくていい。 目的・イメージ・予算の3つさえ言語化できれば、あとはデザイナーが道を示します。筆者が10年の実務で学んだのは、「準備の質がプロジェクトの成否を決めるが、完璧な準備などない」ということです。不完全でもいいから、早めに相談してください。その方が、無駄な迷いと後戻りを防げます。
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