デザイナーから入稿データをもらったら?依頼者が取るべき3つの選択肢
この記事の要点
- 入稿とは、そのまま印刷できる完成データを印刷会社に渡すことです。
- デザイナーから「入稿データをお渡しします」と言われた依頼者には、①代行を頼む②自分でネット印刷に入稿する③印刷会社を紹介してもらう、という3つの選択肢があります。
- 自分で入稿する場合、塗り足し・トンボ・解像度・カラーモードの4点は全社共通の最低限のチェック項目ですが、印刷会社ごとに追加の仕様があるため、必ず使用予定の印刷会社の入稿ガイドを一度通しで読む必要があります。
- ネット印刷では入稿完了後のデータ差し替えは基本的にできません。校正は何度でもやり直せますが、校了は原則として一度きりです。
- トラブルが起きたときは、データ内容の問題はデザイナーへ、印刷品質の問題は印刷会社へ連絡するのが基本ですが、色の問題など責任の所在があいまいなケースもあるため、最初の役割分担の取り決めが重要です。
入稿とは?依頼者がまず知っておきたい基本の意味
入稿とは、そのまま印刷できる完全な状態のデータを印刷会社に渡すことです。データを入稿すると印刷用データとして不備がないかはチェックされるものの、デザインやデータの内容自体はチェックされないことが多く*2、文字の間違いやデザインの意図と違う仕上がりになっていないかを確認する責任は依頼者やデザイナー側にあります。
多くの場合、デザイン制作と印刷発注は別工程・別会社です。デザイン事務所が印刷まで行わないケースは少なくないため、デザインが完成した段階と印刷が終わった段階の間には別のステップがあると理解しておく必要があります。
デザイナーから「入稿データお渡しします」と言われたら?依頼者が取るべき3つの選択肢
結論から言うと、入稿データを受け取った依頼者には次の3つの選択肢があります。予算・手間・納期のどれを優先するかで、選ぶべき道は変わります。
| 選択肢 | 向いている人 | 費用感 | 手間 | 特徴 |
| ①デザイナーに入稿代行を依頼 | 印刷の知識に自信がない人、時間がない人 | 案件規模により変動(後述) | 少ない | ミスのリスクを最小限にできます |
| ②自分でネット印刷に入稿 | コストを抑えたい人、基本知識がある人 | 印刷費のみで代行料はかかりません | 多い | 不備があれば自己責任になります |
| ③印刷会社を紹介してもらう | 部数が多い人、紙質や特殊加工にこだわりたい人、修正対応の柔軟性を求める人 | 部数によってはネット印刷より安くなることもあります | 中程度 | 相談しながら仕上がりを調整できますが、見積もりまでに時間がかかることも |
この3択があることを知らないまま自己判断で安いところに入稿すると、トラブルにつながりやすい場合があります。選択肢を知るだけで判断の質は上がります。
選択肢1: デザイナーに入稿代行を依頼する
デザイナーに入稿作業ごと任せる方法です。個人出品者の例ではチラシで5,000円前後、パンフレットで8,000〜12,000円程度の代行料金が設定されているケースがあります*3が、事務所や制作会社では高くなる傾向があります。入稿代行が制作費に含まれるかどうかで費用や意味合いが変わるため、必ず見積もりを取り、打ち合わせ時に「入稿まで込みでお願いしたい」と伝えておくと良いです。
選択肢2: 自分でネット印刷(ラクスル・プリントパックなど)に入稿する
もっともコストを抑えられる方法です。A4チラシなら少部数で数千円台から発注できることが一般的ですが、価格は用紙・部数・加工で大きく変わります。使用予定のネット印刷会社の見積もりフォームで実際に試算することをおすすめします。
ネット印刷各社はデータチェックの仕様が統一されていないため、ラクスルとプリントパックで必須項目や書き出し形式の指定が異なることがあります。PDF入稿のみ対応でIllustratorファイルを受け付けない会社もあるため、使う印刷会社の入稿ガイドを一度通しで読む手間は避けられません。不安があれば入稿代行を検討してください。
選択肢3: 印刷会社を紹介してもらい任せる
デザイナーの提携先や地域の印刷会社を紹介してもらい直接発注する方法です。ネット印刷にはない用紙の質感や特殊加工の相談ができ、部数が多い案件では単価が安くなることもあります。対人対応なので不備があった際の相談がしやすいのも利点です。
デメリットとしては、見積もりや提案に時間がかかる場合があること、地域の印刷会社はWebの入稿ガイドが整備されていないことが多くコミュニケーションコストが発生する点があります。部数が多い、紙質や加工にこだわる、修正の柔軟性を重視する場合に向いています。
Web入稿とPDF入稿、どちらを選ぶ?形式ごとの特徴と使い分け
印刷会社によって、ブラウザ上で直感的に配置を行う「Web入稿(オンラインデザイン)」と、自身で作成したPDFをアップロードする「PDF入稿」が選べます。初心者はテンプレートが用意されたWeb入稿が便利ですが、デザインの自由度や細部へのこだわりを重視するなら、デザイナーが作成した高品質なPDF(完全データ)での入稿がもっとも確実です。
トラブルを防ぐための「完全データ」作成と入稿前の注意点
自分で入稿する場合、確認すべき項目があります。ここを飛ばすと仕上がりに直結するトラブルになります。
再入稿を防ぐための「完全データ」の定義と共通チェックリスト
「完全データ」とは、印刷会社側で修正を一切加える必要がなく、そのまま印刷工程へ進める状態のデータを指します*1。不備があるとデータチェックで止まってしまい、納期に影響を及ぼすため、最低限以下のチェックリストは必ず確認しましょう。
- 仕上がりサイズとデータのサイズが一致しているか
- カラーモードがRGBではなくCMYKになっているか
- 必要な「塗り足し」が3mm確保されているか
- 画像の解像度が300〜350dpi程度あるか
塗り足し(裁ち落とし)とトンボの確認
塗り足しとは仕上がりサイズより天地左右に設けられた余分な範囲で、通常3mmほど外側に取ります*4。これがないと断裁時に用紙の端に白いフチが出たり、印刷会社からデータ修正を求められて納期が遅れたり追加費用が発生したりします。
塗り足しの端を示すトンボ(トリムマーク)が基準線になり、元データに塗り足しがあってもファイル変換や書き出しの過程で情報が欠落することがあるため、入稿直前にもう一度確認する習慣をつけてください。
解像度とカラーモード(RGBとCMYKの違い)
画像の解像度は300dpi以上が推奨で*5、200dpi未満だと画像部分が荒くなる可能性があります。スマートフォンで撮った写真やWebから持ってきた画像は解像度不足になりやすいです。
カラーモードでは、モニター用のRGBは印刷用のCMYKより色の範囲が広く、RGBをCMYKに変換すると画面と印刷で色味が変わることがあります。ブランドカラーにこだわる場合は色校正で実物を確認することをおすすめします。
塗り足し・トンボ・解像度・カラーモードの4点はどの印刷会社でも共通の最低限チェック項目です。ただしPDF/X-1aの必須、特定フォントの禁止、トンボのサイズ指定など印刷会社ごとの追加仕様があるため、入稿前に使用予定の印刷会社のガイドを必ず一度通して確認してください。
使用ソフト別・印刷データの書き出しと保存設定
デザインに使用したソフトによって、適切な保存・書き出し設定は異なります。特に設定ミスが起きやすいIllustratorとOfficeソフトについては以下の点に注意してください。
Illustrator:CMYK設定と保存バージョンの確認
ドキュメント設定のカラーモードがCMYKであることを確認し、ラスタライズ効果設定は300ppi以上に設定します。保存時は印刷会社が推奨するバージョン(CC等)を選択してください。
Word/PowerPoint:サイズ設定とPDFへの変換手順
ページ設定で必ず実寸サイズ(A4なら210×297mm)になっているかを確認しましょう。フォントの置き換わりを防ぐため、入稿時は「名前を付けて保存」からPDF形式を選択して書き出してください。
「画像リンク」と「フォント」の不備を防ぐ最終チェック項目
画像は「埋め込み」にするか、リンク形式の場合は画像ファイルを同一フォルダに同梱して入稿します。また、文字化けや位置ズレを防ぐため、Illustratorを使用している場合は全てのテキストを「アウトライン化」して、パス図形(図形データ)に変換しておくのが鉄則です*6。
入稿後の差し替え不可というルールを理解しておく
ネット印刷では入稿完了後のデータ差し替えは自動処理のため基本的に対応できません。地域の印刷会社や対人対応の会社では納期に余裕があれば差し替えに応じてもらえる場合もありますが、追加費用が発生することがほとんどです。入稿ボタンを押す前の確認が実質的な最終チェックだと考えてください。
校正・校了とは?依頼者が確認すべきタイミングと費用感
校正は何度でもやり直せますが、校了は原則として一度きりです。この違いを理解しておくだけで印刷までの流れが分かりやすくなります。
校了とはデータに不備や修正箇所がなくなり「印刷できる完全な状態」になったことを指し*7、印刷会社は校了データを受け取ってから印刷工程に進みます。校了後のデータ修正は原則できませんが、納期によっては有料で対応してもらえる場合もあります。
色校正はロゴ入りの印刷物など色の再現性が重要な案件で強くおすすめします。簡易な色校正は1回あたり1,300円前後*8、日数は入稿から校正紙到着まで3〜4営業日ほどかかり、全体で1週間ほど余裕を見ておくと安心です。本格的な色校正はさらに費用と日数がかかります。
筆者は初回打ち合わせで「校正データを見て気になる箇所があれば遠慮なく伝えてください。校了と伝えた瞬間にそこから先は基本的に直せなくなります」と伝えるようにしており、この一言で校了後の修正依頼を減らせます。
入稿後にトラブルが起きたら誰に連絡すべきか
基本的にはデータ内容に関する問題はデザイナーへ、印刷の仕上がりに関する不備は印刷会社へ連絡するのが適切です。この線引きを把握しておくと初動が変わります。
例えば文字誤りやレイアウトの意図違いはデザイナー側の問題、断裁位置のずれやインクの薄さは印刷会社側の問題です。ただし色のトラブルなど責任の所在があいまいになるケースも多く、事前の役割分担が重要になります。
依頼者が入稿後に自己判断でデータを加工するケースは注意が必要です。加工してから入稿するとCMYK変換などで色味が想定と違う仕上がりになることがあるため、データを加工する前に必ずデザイナーに相談してください。
トラブルを防ぐ最善策は、入稿前の打ち合わせで「誰が何を担当するのか」をはっきり決めておくことです。データ作成はデザイナー、入稿作業は依頼者、印刷後の不備対応は印刷会社など、役割を言語化しておくと連絡先に迷いません。
まとめ
入稿は「データを渡して終わり」の作業ではありません。依頼者にも選択と確認の役割があり、適切に関わることで印刷物づくりがスムーズになります。
デザイナーに代行を頼む、自分でネット印刷に入稿する、印刷会社を紹介してもらう――この3つの選択肢を理解し、自分で入稿するなら塗り足し・トンボ・解像度・カラーモードを確認し、使用予定の印刷会社のガイドは必ず読むこと。差し替え不可や追加費用の前提も忘れないでください。
「入稿」が分からなくて戸惑うのはあなただけではありません。分からないことは放置せず、今回は任せるか次は自分で挑戦するかを選べること自体が制作の機会を広げます。まずはどの選択肢が自分に合うかを考えてみてください。
FAQ
Q. 入稿は依頼者が自分でやらないといけませんか?
A. 必須ではありません。デザイナーに入稿代行を依頼する、印刷会社を紹介してもらう、自分でネット印刷に入稿するという3つの選択肢があり、予算と手間のバランスで選べます。
Q. デザイナーに入稿代行を依頼する場合、いつまでに伝えればいいですか?
A. デザイン制作の打ち合わせ段階で伝えるのが理想です。入稿代行は見積もりや作業スケジュールに影響するため、後から追加で依頼すると納期調整や追加費用が発生しやすくなります。
Q. ネット印刷で「PDF入稿のみ対応」と書いてあったら、Illustratorファイルは使えませんか?
A. その印刷会社ではaiやeps形式での入稿を受け付けていない可能性があります。PDFで書き出す作業が別途必要になるため、事前にデザイナーへ「使用予定の印刷会社はPDF入稿のみです」と伝え、対応形式で納品してもらうのが確実です。
Q. 自分で入稿してから、印刷会社から「データ不備があります」と連絡が来ました。修正にはどうすればいいですか?
A. まずは不備の内容を確認し、デザインの意図に関わる修正であればデザイナーに、単純なファイル形式の不備であれば印刷会社の案内に従って自分で修正します。多くのネット印刷会社では再入稿の追加費用はかからない場合が多いですが、納期が延びる可能性があるため早めの対応が重要です。
Q. 色校正は必ず頼んだ方がいいですか?
A. ロゴやブランドカラーなど色の再現性が重要な案件では強くおすすめします。簡易な色校正であれば1回1,300円前後、日数は3〜4営業日が目安なので、余裕を持って依頼すると安心です。
Q. 校了後に間違いに気づいたら、もう修正できませんか?
A. 多くの印刷会社では校了後のデータ修正はできませんが、印刷工程の進み具合や納期次第で有料対応してもらえる場合もあります。気づいた時点ですぐに印刷会社またはデザイナーに連絡し、対応可能かどうかを確認するのが最優先です。
デザイン・制作のご相談について
ABABO DESIGNはフライヤー・パンフレット・ロゴなどの印刷物からWebサイトまでを一貫して手がけるデザイン事務所です。「何を伝えるか」を整理する段階から相談できます。中小企業の広報・採用・ブランディングに合わせた無理のない進め方を提案します。
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