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2026.08.19グラフィックデザイン

会社案内で複数事業を整理する作り方【5ステップ】

この記事の要点

  • 事業数に合わせてページを均等に割ると、読み手は「何をやっている会社か」を一瞬で理解できなくなります。
  • 複数事業の会社案内は「ヒアリング→共通軸の有無の判断→図解の型選定→順番決定→紙面配分」という5ステップで設計すると手戻りが減ります。
  • 共通軸とは、複数事業に共通して存在する理念・技術・顧客のいずれかを指しますが、見つからない事業構造も珍しくなく、その場合は無理に探さず独立した見せ方を選ぶことが実務上の判断になります。
  • 事業を並べる順番は、会社案内の用途(営業資料・一般配布・採用/IR)によって、売上規模順・顧客の入口順・将来性順のいずれかを選びます。
  • 図解はマトリクス型・階層型・共通軸型の3パターンに整理でき、事業間の技術・顧客の重なりの強さによって向き不向きが分かれます。

「事業ごとに均等配分」が会社案内を分かりにくくする理由

事業が3つあるからページも3等分する。この発想は公平に見えて、実は情報の優先順位を放棄した設計です。結論から言うと、均等配分は「何をやっている会社か」を読み手に伝える機能を弱めてしまいます。

会社案内は限られたページ数の中で、初めてその会社を知る人に「どんな会社か」を伝えるためのツールです。事業が1つなら、その1つを深く説明すればいいので迷いは少ない。ところが事業が3つ、4つとなると、「3ページあるから1事業1ページ」という配分に流れがちです。これは制作サイドにとって楽な決め方ですが、読み手にとっては優しくありません。ページを開いた瞬間にA事業・B事業・C事業が同じ大きさ、同じトーンで並んでいたら、どれが会社の中心なのか判断する手がかりがないのです。

均等配分のラフ(下書き)を見た依頼主から「結局どれが本業なんですか」という質問が出ることは、デザイン実務で観察される現象の一つです。デザイナーとしては「事業を平等に扱った方が公平で誠実だ」という善意で均等配分を選んでしまいがちですが、読み手が求めているのは公平さではなく理解しやすさです。この違いを取り違えると、丁寧に作った会社案内が「よくわからない会社」という印象を残してしまいます。

多角経営の会社が「何をやっている会社かわからない」と言われる現象は、経営戦略の問題として語られることが多いのですが、デザイン側から見ると構造は単純です。事業間の関係性を説明する情報が紙面に存在しないまま、事業だけを並べているのです。たとえば化学メーカーが樹脂製品事業とインキ事業を別々のページで紹介する場合、両者に共通する「加工技術」を先に示さなければ、読み手には「なぜ同じ会社がこの2つをやっているのか」が伝わりません。

複数事業の会社案内を整理する制作フロー(5ステップ)

複数事業の会社案内は、単一事業向けの「目的・ターゲット設定→情報整理→構成決定→デザイン」という王道フローだけでは足りません。事業ごとに読み手が違う可能性がある、という前提を加えたうえで、以下の5ステップで設計します。

  1. ヒアリングで事業構造を聞き出す
  2. 共通軸の有無を判断する
  3. 図解の型を選ぶ
  4. 事業を紹介する順番を決める
  5. 紙面配分を決める

それぞれのステップを、判断基準とあわせて解説します。

Step1 ヒアリングで事業構造を聞き出す

ヒアリングの初期段階で重要なのは、売上規模や設立順ではなく「なぜこの事業を始めたのか」という経緯を聞くことです。筆者がヒアリングで必ず確認するのは、次の3点です。

  • どの事業が現在の売上の中心か
  • 事業同士に技術・顧客・理念の重なりがあるか
  • 将来的に伸ばしたい、あるいは縮小したい事業はどれか

このヒアリングを省略して構成に入ると、後から「実はこの事業が一番伝えたいんです」という要望が出てきて構成をやり直す事態になりがちです。ヒアリングの段階で事業間の重なりまで確認しておくことが、後工程での構成のやり直しを避けるうえで重要になります。

Step2 共通軸の有無を判断する

判断基準:ヒアリングで聞いた「技術・顧客・理念」のうち、どれかが複数事業に共通しているかを確認します。

事業構造が見えてきたら、次に探すのは事業同士の「共通軸」です。共通軸とは、複数の事業に共通して存在する理念・技術・顧客のいずれかを指します。共通軸が見つかると、会社案内の冒頭で「私たちはこの軸を中心に事業を展開しています」と一文で説明できるようになり、読み手は個別事業を読む前に全体像を先に理解できます。

具体的には、Step1で聞き出した情報を次の順で確認します。まず「同じ加工技術・同じ生産設備を使っているか」を見て、当てはまれば技術軸が共通軸になります。当てはまらなければ「同じ顧客層に販売しているか」を確認し、これも当てはまらなければ「創業の理念・解決したい課題が同じか」を確認します。製造業であれば技術軸が見つかりやすく、サービス業であれば顧客軸や課題軸が見つかりやすい傾向があります。

ただし、共通軸が見つからない事業構造も珍しくありません。たとえば創業者が全く異なる分野で複数の会社を買収・統合してきたようなケースでは、技術・顧客・理念のいずれも重ならないことがあります。その場合は「共通軸がない」という事実を無理に隠さず、事業ごとに独立した見せ方を選ぶ方が誠実です。共通軸探しに時間をかけすぎるより、早めに「独立型で見せる」と判断を切り替えることも実務上は重要です。共通軸の有無は、次のStep3で選ぶ図解の型に直結します。

Step3 図解の型を選ぶ

判断基準:事業間の技術・顧客の重なりが強いか、緩やかに理念だけでつながっているか、それとも重なりがなく独立しているかで型を選びます。

  • 技術・顧客の重なりが強い→共通軸型
  • 理念だけで緩やかにつながる、または重なりが弱い→階層型
  • 重なりがなく事業ごとに独立した市場を持つ→マトリクス型

水平型多角化(既存事業の技術・ノウハウを新しい市場に展開する経営戦略)を採っている会社は、事業同士に技術的なつながりがあるため、共通軸型図解で技術のつながりを可視化すると効果が出やすいという対応関係です。順番の工夫よりも、つながりの見せ方そのものを優先すべきケースだといえます。

Step4 事業を紹介する順番を決める

判断基準:この会社案内を「誰が最初に見るか」、つまり用途は何かで決めます。

事業を並べる順番は、単一事業前提の「優先順位づけ」の延長では決められません。筆者は会社案内の用途を上位の判断軸として、次の3パターンで整理しています。

用途順番の基準向いているケース
営業資料売上規模順、または営業担当が商談で見せたい事業を先頭商談の場で事業規模の説明を重視する場面
一般配布・店頭配布顧客の入口(認知経路)順一般顧客が普段目にしている事業から紹介したい場面
採用・IR(投資家向け広報)将来性(伸ばしたい事業)順将来のビジョンを伝えたい場面

営業資料として使う会社案内なら、営業担当が商談で最初に見せたい事業を先頭に置くべきです。一方、一般向けの会社案内であれば、顧客の認知経路(たとえば店舗事業で知られている会社なら店舗事業)から入る方が違和感なく読んでもらえます。営業の場で見せる順番と、印刷して配布する会社案内の順番が必ずしも一致しない、という点はここで押さえておきたいポイントです。

Step5 紙面配分を決める

判断基準:共通軸の強さに応じて、共通軸ページと個別事業ページの比率を調整します。

紙面配分の基本形は、理念・概要1〜2ページ+事業ごと1〜2ページです。事業間の関連性が強く共通軸がはっきりしている場合は、個別事業の説明を簡潔に済ませられるため、共通軸ページを厚くして個別ページを減らす配分が有効です。逆に共通軸が弱い、あるいは存在しない場合は、共通軸ページを薄くしても個別ページ側の説明量は減らせないため、事業数に応じてページ数が増えやすくなります。

実績紹介の整理:多様な事業実績を説得力に変える見せ方

「どの事業の実績を載せるべきか」は、単なる売上順ではなく、その実績が会社全体の信頼性にどう寄与するかで判断します。複数の事業実績を並べる際は、共通の課題解決アプローチごとにグルーピングして紹介することで、読み手に事業の幅広さと専門性の両方を印象づけることが可能です。

複数事業をわかりやすく図解する3つの型

図解の型は、事業間の関連性のパターンに応じて選びます。まず自社の事業構造がどのパターンに近いかを確認し、そのうえで型を選ぶ順序で考えると判断しやすくなります。

技術・顧客の重なりが強い場合→共通軸型 共通軸型図解は、ベン図のように複数事業の重なる部分に共通の強みを置く図解です。個別事業を円で表現し、中心に共通軸を配置することで、「別々の事業に見えて、実は同じ強みから生まれている」という構造を一目で伝えられます。水平型多角化のように、技術的なつながりが強い会社に向いています。

理念だけで緩やかにつながる場合→階層型 階層型は、理念→事業群→個別事業という順にツリー状に展開する図解です。会社紹介資料でよく見られる「理念・概要→事業全体の説明→事業①→事業②」という構成は、この階層型の考え方を土台にしています。理念を頂点に置くことで、個別事業がなぜ存在するのかという文脈を先に示せるのが強みです。技術や顧客の重なりが弱く、理念だけでつながっている会社に向いています。

重なりがなく事業が独立している場合→マトリクス型 マトリクス型は、事業を「市場×製品」など2軸で配置する図解です。事業間の関連性が薄く、それぞれが独立した市場を持つ会社に向いています。事業数が多すぎると図が煩雑になるため、実務上4〜6事業程度までを扱いやすい目安にしています。共通軸が見つからなかった場合も、この型で「独立した事業の集合体である」ことを正直に見せる選択が有効です。

化学系メーカーのように事業内容が専門的で伝わりにくい会社ほど、図解やイラストを併用した会社案内が効果を発揮する例が紹介されています。事業内容が専門的であるほど、文字説明だけに頼らない視覚的な整理が効いてくるのです。

業種別のデザイン戦略:製造業・不動産業での構成ポイント

製造業:技術力の高さと品質へのこだわりを視覚化する構成

製造現場の写真や設備紹介、品質管理のフローチャートなどを多用し、目に見えない「技術力」を視覚化します。複数の製品群がある場合は、それらが共通の基盤技術から派生していることを図解で示すことで、会社全体の総合力を効果的にアピールできます。

不動産業:安心感とブランドイメージを醸成するデザイン戦略

物件のスペックだけでなく、開発背景にある想いやアフターフォロー体制など、顧客の安心感につながる情報を優先して配置します。多角的なサービスを展開している場合は、ワンストップで課題解決できるメリットを強調するページ構成が有効です。

制作目的別の最適化:採用活動とブランディングでの活用法

採用パンフレット:求職者の共感を生む「人」と「ビジョン」の配置

単なる事業説明に留まらず、仕事を通じた成長や社会貢献度など、情緒的な価値を重視します。複数事業がある場合は、事業間を横断したキャリア形成の可能性を示すことで、求職者にとっての選択肢の広さを魅力として伝えます。

ブランドイメージの向上:会社独自の「らしさ」を伝えるデザイン

全ページで一貫したトーン&マナーを守りつつ、各事業の個性をアクセントカラー等で表現します。会社全体のアイデンティティが根底にあることを視覚的に伝えることで、多角化してもバラバラな印象を与えない強固なブランド構築が可能になります。

複数事業の会社案内でよくある失敗とビフォーアフター

複数事業の会社案内でよく見る失敗は、事業を設立順(時系列)に並べてしまうことです。設立順に並べると、読み手は「古い事業=本業」と誤解しやすくなります。実際には最新事業が現在の売上の中心であっても、紙面上は古い事業が先頭にあるため、印象が逆転してしまいます。

  • ビフォー:設立順にA事業(創業時の事業)→B事業→C事業(現在の主力)と並べ、C事業の存在感が薄くなる
  • アフター:冒頭で共通軸(理念・技術)を一文で示し、そのうえで現在の売上規模・将来性に基づいてC事業→B事業→A事業と並べ替える

時系列という事実の並びを一度手放し、共通軸を先に見せ、そのうえで事業を並べ直す。これは共通軸が明確なケースで筆者が実務上採用している方法の一つです。時系列は会社概要ページの沿革として残せば十分で、事業紹介ページで時系列を優先する必要はありません。

よくある質問(FAQ)

Q. 事業ごとにデザインテイストを変えてもいいですか?

A. 完全に変えると「別会社に見える」リスクがあります。配色やフォントなど1〜2要素は全事業共通にし、アイコンや写真だけで差をつけるのが実務上の落とし所です。

Q. 共通軸がどうしても見つからない場合はどうしますか?

A. 見つからないこと自体は珍しくありません。技術・顧客・理念のいずれにも重なりが確認できない場合は、無理に軸を作らず、マトリクス型で事業ごとに独立した見せ方を選ぶ方が誠実です。共通軸探しに時間をかけすぎるより、早めに切り替える判断も実務上は重要です。

Q. 多角経営で事業の関連性が薄い場合、他に方法はありますか?

A. 技術や顧客での重なりが薄くても、「なぜこの事業を手がけているか」という理念軸だけで緩やかにつながることがあります。この場合は階層型図解で理念を頂点に置き、個別事業を文脈づける方法が有効です。

Q. 事業数が5個以上ある場合、図解より文字説明を優先すべきですか?

A. 事業数が多いほど図解の効果は上がります。文字だけの説明は事業数が増えるほど読み手の負担が大きくなるため、5個以上ある場合はマトリクス型や階層型で構造を先に見せ、詳細は個別ページで補う構成が向いています。

Q. 会社案内のデザインを外注する場合、複数事業の整理も依頼できますか?

A. 多くのデザイン事務所はヒアリングの中で事業構造の整理も含めて対応しています。ABABO DESIGNでも初回ヒアリングで事業の共通軸・優先順位を一緒に整理するところから始めています。

まとめ:複数事業の会社案内は「共通軸の有無」から考える

複数事業の会社案内は、均等配分ではなく「ヒアリング→共通軸の有無の判断→図解の型選定→順番決定→紙面配分」という5段階で設計すれば、読み手を迷わせない仕上がりになります。共通軸が見つかればそれを軸に事業をまとめ、見つからなければ独立した見せ方を選ぶ。どちらの判断も、事業構造を正直に見せることにつながります。

事業数が増えるほど会社案内は複雑になりがちですが、それは裏を返せば事業間の関係性を説明する好機でもあるのです。焦って均等に割る前に、一度立ち止まって共通軸の有無を確認してみてください。

もし自社の複数事業をどう整理すればいいか迷っている場合は、ABABO DESIGNへご相談ください。初回のヒアリングでは、事業の共通軸や優先順位を一緒に整理するところから始めますので、構成案がまだ固まっていない段階でも問題ありません。

デザイン・制作のご相談について

ABABO DESIGNは、フライヤー・パンフレット・ロゴなどの印刷物からWebサイトまでを一貫して手がけるデザイン事務所です。「何を伝えるか」を整理する段階からご相談いただけるので、内容が固まっていなくても大丈夫です。中小企業の広報・採用・ブランディングの実情に合わせて、無理のない進め方をご提案します。

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